肝臓活性化・
肝臓脂肪低下
公益財団法人 科学技術交流財団 研究会事業「健康長寿延伸を志向した新規脂肪酸分析法の開発と応用」第4回 研究会(2017.7.28 名古屋)、
農林水産省「知」の集積と活用の場® 産学官連携協議会(2020.11.19-25 オンライン)、
先端農業連携機構 農業技術革新・連携フォーラム2020(2020.12.14-28 オンライン)、
第21回日本抗加齢医学会総会(2021.6.27 京都)、
日本食品科学工学会 第68回大会(2021.8.26 福岡)、
The 7th International Electronic Conference on Medicinal Chemistry(2021.11.1-31 オンライン;10.3390/ECMC2021-11507 (DOI)) 、
The 2nd Edition of Food Science and Technology Virtual(2022. 4.15-16 オンライン)、
The 3rd International Electric Conference on Food: Food, Microbiome, and Health(2022.10.1-15 オンライン)
発表内容
お酒の好きな方は、自分も含め数多くいます。お酒を飲むと、リラックスでき、ストレスが解消されることをいう方が多いです。また、人とのコミュニケーションを取りやすくしてくれるなど、多くの効果があります [1]。
ところが、お酒を飲むと食欲増進効果があり、肥満から肝臓に中性脂肪がたまる、脂肪肝になりやすくなります。またお酒自体も肝臓で中性脂肪を作る働きを活性化するため、脂肪肝を誘導します。脂肪肝は、肝炎を引き起こし、肝硬変、さらに肝臓がんへと進行していくことが判っています(図1) [2]。これには、ストレス、運動不足、喫煙も大きな要因です。このため、お酒を飲んでストレスを解消するか、それともお酒を飲まずにストレスを解消できるか。。。
最近、お酒の好きな知人が脂肪肝から肝臓がんへ進み、何とかしなければいけないと思い開発を行うことにしました。
図1 脂肪肝から肝臓がんへの進行
肝臓は、糖分を分解し、エネルギー源として中性脂肪を合成、蓄積します(図2)。しかし、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎなどによって、肝臓に脂肪が30%以上たまった状況を脂肪肝と言います [3]。脂肪肝は、飲酒、肥満、ストレス、喫煙、糖尿病など、多岐にわたる原因があり、飲酒の場合をアルコール性脂肪肝、それ以外を非アルコール性脂肪肝と二つのタイプに分けられます [2, 3]。
アルコールは肝臓で代謝・解毒されます。この際、エネルギーと脂肪酸になりますが、この脂肪酸が中性脂肪になります。また、この過程では、肝臓で脂肪の燃焼がなされないため、また糖分から中性脂肪を作る働きを活発にするため、脂肪が蓄積することになります。さらに、お酒を飲むと食欲増進効果になるため、肝臓にたまる脂肪が増えてしまい、飲み過ぎは、アルコール性脂肪肝になります [2]。
非アルコール性脂肪肝は、肥満や糖尿病などにより、インスリンの分泌が悪くなり、肝臓に脂肪がたまりやすくなることによって起こります [3]。
脂肪肝が進行すると、脂肪性肝炎を引き起こし、炎症により肝臓の線維化が生じ肝硬変、さらに遺伝子変異により肝臓がんとなり、最後には死を迎えます(図1) [2, 3]。この原因として、肝臓に脂肪がたまると、肝臓の細胞中のミトコンドリアに変異が生じるのが、一因とされています [4, 5]。
図2 肝臓の働き
脂肪肝を解消するには、飲酒を控え、食事を抑え、運動することです。他の方法があればお酒も気軽に飲めるのに。。。ストレスがたまっても結局のところ脂肪肝になるのに。。。そこで、調べてみると、残念ながら、これといった薬はありませんでした。次に食品を検索してみると、ニンニク、ニガウリ(ゴーヤ)、生姜、ライチ、朝鮮人参、朝鮮五葉(チョウセンマツ)などの抽出物(エキス)や成分が報告されていました [6]。この中で、長い食習慣があり、臨床試験が行われている生姜に注目しました [7-9]。
生姜は、紀元前650年前から熱帯アジアで栽培され、生薬や漢方薬として、また薬味などの料理素材として、健康のための長い食習慣の歴史を持ちます [10]。
生姜の効能は、吐気・嘔吐止め、消化促進、脂質低下(血中脂質改善、抗脂肪蓄積)、抗高血圧(心臓血管保護)、抗炎症(鎮痛、咳止め、抗関節炎)、抗酸化、抗がん、エネルギー消費促進(発汗、熱産生、血行改善、冷え性改善、体脂肪燃焼促進、)、グルコース吸収低下、抗肥満、抗糖尿病、免疫力向上、抗微生物、利尿促進、神経保護、などが報告されています [10-15]。有効成分としては、生生姜に多いジンゲロール、加熱生姜や乾燥生姜に多いショウガオール、ジンゲロン、ケルセチン、精油などがあります [15]。
生姜の副作用としては、胸やけ、下痢、口の中の刺激などがあります [15]。
生姜が脂肪肝を低下させる臨床研究もされていますが [7]、生姜の成分分析がなく、どの成分が有効であったかは不明でした。
脂肪肝を低下させるには、肝臓の代謝(ミトコンドリア)を活性化することと、脂肪分(脂質)が分解されこと(脂質のβ酸化促進)が重要です。
生姜では、生生姜に多い成分である6-ジンゲロールと、加熱生姜に多い成分である6-ショウガオール、の二つの成分とともに、精油が報告されています [8, 16, 17, 18]。ところが、6-ジンゲロールを否定する論文もあり [17]、状況がはっきりしませんでした。
そこで、肝臓の細胞を使って、6-ジンゲロールと6-ショウガオールによる肝臓の活性化と脂肪低下の試験を行いました。
生姜の成分は、肝臓内で肝臓細胞にまず直接作用し、次に肝臓による代謝が行われ代謝成分が肝臓細胞に作用します。このため、肝臓の細胞を用い、臨床結果と相関のある独自のHP-SPR-3D法により [19]、ミトコンドリアの活性化をモニターしました。また、細胞を三次元的に培養して、脂肪量の変化を測定しました。
この結果、100nMにおいて、6-ジンゲロールでは肝臓での代謝前後の両方でアポトーシス(自殺)毒性が、6-ショウガオールでは肝臓での代謝活性促進が、代謝前よりも代謝後で2倍程度大きく認められました(図3, 4)。6-ショウガオール 1000nMでは、代謝前ではアポトーシス毒性が、代謝後は代謝活性の促進により無毒化が観察されました。6-ショウガオール100nMでは、約20%の肝臓脂肪(光って見える部分)の低下が見られました(図5)。
以上から、生生姜成分6-ジンゲロールでは、肝臓の代謝活性化・肝臓脂肪の低下はみられませんでした。加熱生姜成分6-ショウガオールでは、肝臓の代謝活性化・肝臓脂肪の低下が認められましたが、6-ショウガオールだけを摂り過ぎると、逆効果になることがわかりました。
図3 6-ジンゲロールの肝臓活性化効果
図4 6-ショウガオールの肝臓活性化効果
図5 6-ショウガオールの肝臓脂肪低下効果
根生姜(生姜の根茎)は、生姜の赤ちゃんです。秋に出来た生姜が冬を越え、春になると眠りからめざめ、芽を出し成長します。このため、生姜の成分は、眠っているときは、雨が降っても流れ出ないように、水に溶けにくい形になっています。これが眠りからめざめると、成分を水に溶けやすい形に自分自身で変え、自分の成長に使います [20]。
これには、糖、アミノ酸、ミネラル、ホルモン、さらに芽が出たあと、病気にかからないように、免疫を上げる成分も作ります。
ヒトでも同じで、水に溶け難いものは、体の中で水に溶ける成分に変える必要があり、効率が悪く、毒性が出やすくなる場合もあります [21]。
抽出物やエキスも悪くないですが、やはり食品のままできれば摂取したいと考えました。
長崎県島原産の無農薬栽培の生姜のみを、協力農家から購入して使用しました。このため、安心でおいしい食材を厳選しました。
目覚めが同時じゃないと成分が不均一になってしまう…そこで、生姜を独自開発グランディール製法™により1-2日で迅速・同時にめざめてもらい、赤ちゃんの生命力の成分を作ってもらいました。
このあと、スライスして蒸し、乾燥しました(図6)。この結果、めざめ生姜のショウガオールが、めざめさせていないもの(ウルトラ生姜=蒸し生姜乾燥物)の約1.5倍になりました(図7)。
図6 実験スキーム
図7 6-ショウガオール含有率
ヒト肝臓の細胞を用いて、経口投与(食べること)を想定した、迅速・同時休眠打破生姜根茎の肝臓細胞の代謝活性化を、臨床結果と相関のある独自のHP-SPR-3D法により [19]、ミトコンドリアの活性化によりモニターしました(図8)。この結果、濃度依存的に肝臓ミトコンドリアの活性化が認められ、肝臓の代謝が活性化されていることが判明しました。
また、細胞を三次元的に培養して、脂肪量(脂肪肝)の変化を測定しました。この結果、濃度依存的に肝臓の脂肪低下が認められました(図9)。約27%の減少が、迅速・同時休眠打破生姜根茎により確認されました。
ここで、未処理ではほとんど効果がなく、迅速・同時休眠打破ショウガ根茎末の肝臓代謝活性化および脂肪低下作用に対する高い効果が認められました。
図8 肝臓ミトコンドリア活性化効果
図9 迅速・同時休眠打破生姜根茎の肝臓脂肪低下効果
濃縮も抽出せず、長い食習慣のある食品そのままで、安心・安全な高機能化に成功しました。年齢とともに低下していく若々しさや、健やかさ。これを生姜の赤ちゃんの生命力が、体本来の力に働きかけ、良い状態に保つお手伝いをします。
引用文献
[1] Scott, R. G., Wiener, C. H., & Paulson, D. (2020). The benefit of moderate alcohol use on mood and functional ability in later life: due to beers or frequent cheers?. The Gerontologist, 60(1), 80-88.
[2] O’shea, R. S., Dasarathy, S., McCullough, A. J., & Practice Guideline Committee of the American Association for the Study of Liver Diseases and the Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology. (2010). Alcoholic liver disease. Hepatology, 51(1), 307-328.
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